企業主導型保育園が抱える課題~安全面編~

企業主導型保育事業は、平成28年度に内閣府が開始した 従業員の為に保育園設置を考える企業向けの助成制度です。

企業が従業員の働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供するために設置する保育施設や、地域の複数の企業が共同で設置・利用する保育施設に対し、施設の整備費及び運営費の助成を行います。

従業員の仕事と子育ての両立を応援する 素晴らしい制度である一方、保育事業に初めて挑戦する事業者も多いので 様々な課題を抱えているケースがあるのも事実です。本コラムでは、想定される様々な課題の中でも、「安全面」について取り上げます。

全国の保育園の事故事例

内閣府によると、2020年の保育施設等における事故の件数は 、過去最多の2,015 件(対前年+271)であったとの報告があり、内訳としては以下のようになっております。

【2020年の事故報告件数2,015件の内訳】

・負傷等が 2,010 件(対前年+272)、うち1,660件〔83%〕が骨折、死亡が 5 件(対前年▲1)
・事故の発生場所は、施設内が 1,815 件〔90%〕 (対前年+251)、そのうち 994 件〔55%〕 (対前年+157)は施設内の室外で発生

子どもが成長していく中で、一切ケガをしないということは考えにくいですが、保育園ではお子様の大切な命をお預かりしておりますので、安全にお預かりすることは大前提です。安全にかけすぎはありません。事故を防ぐためにも、まずはどのような事故が起こりうるのかを知り、しっかりと万全な安全対策を講じる必要があります。以下で、特に起こりやすい事故の一例を少しご説明させて頂きます。

※参考:「令和2年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について

①お散歩中の事故

2019年に滋賀県大津市で、散歩中の事故で園児がお亡くなりになる大変痛ましい事例がありました。その他でも同じようにお散歩中に、車との接触事故等により、園児や職員が怪我をする事故が多数発生しております。

 また、散歩中に園児を公園等に置いたまま気づかずに戻ってきてしまう「置き去り」事故も多発しており、東京都に報告されただけで2017~2020年の4年間で94件(迷子など含む)あったとの報告もあります。同じ公園にいた他の保育園のグループに交ざっていて保育士が気づかなかったり、公園を飛び出していなくなった園児を点呼時に発見できなかったりするケースがあるようです。この「置き去り」事故は、重大な事故に繋がる可能性もあるため、あってはなりません。

②お昼寝中の事故

 保育施設での死亡事故の多くは睡眠中に起きており、その中でも「乳幼児突然死症候群(SJDS)」というものがあります。名前の通り、何の予兆もなく、乳幼児が眠っている間に突然死に至ってしまうもので、窒息等の事故とは異なり、原因は未だに判明しておりません。日本では年間100人を超える乳幼児がこの病気で亡くなっており、乳幼児の死亡原因の第4位となっております。

 それ以外のお昼寝中の事故が起きやすい事例としては、布団等による窒息や、口の中に残っていた食べ物による窒息等もあります。

③給食中の事故

 給食やおやつなどの際には、食べているものをのどに詰まらせて窒息してしまう事故や、アレルギーのものを誤って口にしてしまう事故等があります。

安全対策・気を付けるポイント

 上記はあくまで一例となりますが、保育園では多くの事故が起こっていることも現実です。しかし、保育園は子どもたちにたくさんのことを経験し、成長してもらうことも役割の一つであるため、危ないからといって一切お散歩にもいかない等ということは、貴重な学びの場、成長の機会を無くしてしまうことにもなります。そのため、危険性のあることは一切辞めるのではなく、危険性があるということはしっかりと認識した上で、事故を防ぐために、安全対策のマニュアル作成や「ヒヤリハット」の共有等、万全の対策を行うことが重要です。

 以下に、安全対策や気を付けるポイントの一例を少しご紹介致します。

①お散歩中の事故

 お散歩は、自然と触れて好奇心を刺激したり、感受性を豊かにしたり、また交通ルールを学ぶ機会として等、子どもたちの成長においてとても貴重な機会です。安全に楽しくお散歩を行うためにも、以下のような対策を行いましょう。

・お散歩マップの作成

 実際にお散歩ルートを歩いて、道路の見通しや交通量、歩道の有無等を確認し、危険な箇所を避けたり、気をつけなければならない箇所を把握し、ルートを決めます。目印となるものや気をつけなければならない箇所は、お散歩マップにも記入し、職員同士でも共有します。また、定期的な見直しも行うとよいでしょう。

・職員の役割分担、配置を決める

 お散歩時の職員の役割分担、歩く際の職員の配置、万が一何かあった際のそれぞれの役割分担等を事前に決めておく必要があります。

・点呼や居場所確認の徹底

 出発前や戻る前、保育園に戻ってからの点呼、人数確認を行うことはもちろんですが、遊んでいる途中でも常に子どもたちから目を離さず、声かけをしたり、人数を確認しておく必要がございます。

②お昼寝中の事故

 「乳幼児突然死症候群(SIDS)」については、原因は未だ判明しておらず、予防法が確立していないのが現状ですが、様々な調査研究により、いくつかのポイントに留意すれば発症率を低くすることが出来るというデータは少しずつ得られております。お昼寝中の窒息事故や「乳幼児突然死症候群(SIDS)」を防ぐために、以下の対策を行いましょう。

・うつぶせ寝ではなくあお向けに寝かせる

 SIDSは、うつぶせ寝、あお向け寝のどちらでも発症しますが、うつぶせ寝の時の方が発症率が高いことが分かっています。そのため、医学上の理由でうつぶせ寝が勧められている場合以外は、あお向け寝で寝かせるようにしましょう。こうすることで、窒息事故を防ぐことにも繋がります。

・敷布団・マットレス・枕は固めのもの、掛布団は軽いものにする

 柔らかい敷布団やマットレス・枕は、うつぶせになった場合に顔が埋まってしまい、鼻や口がふさがれて窒息するリスクがあるため、赤ちゃん用の固めの寝具を使いましょう。掛布団は、赤ちゃんが払いのけられる軽いものを使用し、顔にかぶらないようにしましょう。また、寝返り等、寝ている間も動き回るため、よだれ掛け、ぬいぐるみなど、口や鼻を覆ったり、ヒモなどが首に巻き付いたりしてしまう危険性があるものは置かないようにしましょう。

・定期的に子どもの様子を確認する

 定期的に子どもの顔色や呼吸状態、体の向きや姿勢等の、睡眠状態を確認することで、万が一呼吸停止等の異常が発生した場合の早期発見、重大事故の予防に繋がります。0歳児は5分おき、1歳~2歳児は10分おきに呼吸チェックを行うことが望ましいとされております。

③給食中の事故

・子どもに合った形態、量、タイミングで与える

 のどに詰まらせることがないよう、子どもに合わせた形態や量で与えるとともに、焦らず、ゆっくりと食事が出来るような雰囲気づくりをすることも大切です。

・食べ物を飲み込んだことを確認する

 食べ物が口の中に残っている状態で、次のものを口に入れたり、遊んだりするとのどに詰まり、窒息事故に繋がる恐れがあるため、しっかりと飲み込み、口の中に残っていないことを確認するようにしましょう。

・アレルギーのある園児用の食事は食器の色を分ける等の工夫をする

 アレルギーについては、保護者からの申し出に基づき、しっかりと把握し、除去食や代替食による対応を行うことが必要です。他の園児の食事と混合することがないよう、食器やトレーの色を分けたり、異なる机にする等、エラーが起きないような工夫をするとよいでしょう。また、食事中も園児が誤ってアレルギーのものを口に入れることがないよう、注意して見ておく必要があります。

アイグランが実践する安全対策

企業主導型保育施設を設置したものの 運営に課題を抱えている方は、その運営を保育のプロ(保育事業委託会社)にお任せすることをお勧めいたします。

アイグランでは、各種マニュアルの作成や、お散歩マップの作成・見直しITシステムも取り入れたお昼寝中のチェック「ヒヤリハット」の共有等、万全の対策がございます。このような対策や、万が一何かあった際の対応においても、保育のプロにお任せいただくことで、安心して頂くことができ、負担軽減にも繋がります。

お気軽にぜひご相談下さい。

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